障害年金は、病気やけがによって生活や仕事などが制限されたときにに受給できる年金です。障害基礎年金と障害厚生年金の2種類があり、初めて医師の診療を受けたときに国民年金に加入していた場合には障害基礎年金を、厚生年金に加入していた場合には障害厚生年金を請求することができます。障害年金が給付されるレベルで仕事が制限されると収入にも影響がでてきます。障害年金はこうした方々にとっては、とても心強い制度です。
 では、障害を抱えながらもお仕事を頑張って収入が増えると、障害年金は停止されてしまうのでしょうか? そして、収入が増えると障害等級に該当していても扶養からはずされてしまうのでしょうか? それぞれ見ていきましょう。

障害基礎年金、障害厚生年金は収入が増えると停止する?

 障害基礎年金と障害厚生年金が停止される共通の条件は以下の通りです。つまり、「業務上で負傷したり、病気を患ったりして障害補償を受ける権利を取得したとき」と、「障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなくなったとき」の2ケースで停止されますが、原則として、収入の増加で停止されることはありません。また、「停止」されるのであって、「権利」を失うわけではありませんので、再び障害等級に該当する程度の障害の状態になったときには支給が再開されます注1)
【障害基礎年金が停止される場合 国民年金法第三十六条】
 障害基礎年金は、その受給権者が当該傷病による障害について、労働基準法の規定による障害補償を受けることができるときは、6年間、その支給を停止する。
 障害基礎年金は、受給権者が障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなくなったときは、その障害の状態に該当しない間、その支給が停止される。
【障害厚生年金が停止される場合 厚生年金法第五十四条】
 障害厚生年金は、その受給権者が当該傷病について労働基準法の規定による障害補償を受ける権利を取得したときは、6年間、その支給を停止する。
 障害厚生年金は、受給権者が障害等級(1級、2級又は3級)に該当する程度の障害の状態に該当しなくなったときは、その障害の状態に該当しない間、その支給が停止される。

 障害基礎年金については、例外的に、収入が増えると停止される場合があります。「20歳前の傷病による障害基礎年金」と「特別障害給付金」です。これらの年金を受給している方は、収入が一定額を超えると年金の給付が停止されます。こちらも停止であって失権ではありませんので、収入額が一定額を下回れば支給が再開されます。障害基礎年金が停止される基準については、こちらを参照ください(いずれの年金も収入制限の額は同額です)。


 障害基礎年金も障害厚生年金も働きながら受給できる年金ですので、収入の額によって停止されることはありません。しかし、内臓の疾患や精神障害のような「有期認定」の場合には、就労の状況によっては障害の程度が変わったと判断され、年金額が減額されたり停止されたりするので注意が必要です(医師によって判断されます)。

扶養から外れる条件は?

 障害年金は頑張って働いて収入が増えても停止されることはありませんが、社会保障の扶養から外れ、保険料の納付が必要になることがあります。国民年金の保険料については、障害基礎年金受給者と障害厚生年金受給者(3級を除く)は年金保険料の納付が免除されますが、それ以外の厚生年金、国民健康保険、健康保険には障害者に対する免除規定はなく、収入が増加して扶養から外れた場合には、収入に応じた保険料の納付が必要となります。被扶養者となる条件は下表のとおりです。

社会保障の種類 障害者の免除規定

被扶養者の条件
対象者 収入要件
国民年金保険 障害基礎年金の受給権者
障害厚生年金の受給者(1級・2級)
第2号被保険者の配偶者であって、第2号被保険者の収入により生計を維持する人(第3号被保険者) 130万円未満
(障害者注2)は180万円未満)
かつ
第2号被保険者の年間収入の2分の1未満注3)

厚生年金保険 障害者の免除規定なし
国民健康保険 障害者の免除規定なし 「被扶養者」という概念は原則存在しない。
(退職被保険者のみあり)
健康保険 障害者の免除規定なし



被保険者の直系尊属、配偶者(事実上婚姻関係と同様の人を含む)、子、孫、兄弟姉妹で、主として被保険者に生計を維持されている人
→同一世帯でなくともよい
130万円未満注4)
(60歳以上または障害者注2)は180万円未満)
かつ
被保険者の年間収入の2分の1未満注3)

※就労時間の制限があります注4)
被保険者の3親等内の親族で上記に掲げる者以外のものであって、その被保険者と同一の世帯に属し、主としてその被保険者により生計を維持されている人
→同一世帯でなくてはならない
被保険者の配偶者で届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあるものの父母及び子であって、その被保険者と同一の世帯に属し、主としてその被保険者により生計を維持する人
→同一世帯でなくてはならない
上記の配偶者の死亡後におけるその父母及び子であって、引き続きその被保険者と同一の世帯に属し、主としてその被保険者により生計を維持するもの
→同一世帯でなくてはならない


注1)65歳に達した日において、障害等級に該1当する程度の障害の状態に該当しなくなつた日から起算して3年を経過していた場合には失権します(老齢年金に移行するため)。
注2)厚生年金保険法による障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害
注3)被保険者の年間収入の2分の1以上である場合であっても、世帯の生計の状況を総合的に勘案して、当該被保険者がその世帯の生計維持の中心的役割を果たしていると認められるときは、被扶養者に該当します。
注4)「同一の事業所に使用される通常の労働者の1週間の所定労働時間及び1月間の所定労働日数の4分の3以上の者」や「週所定労働時間が20時間以上であり継続して1年以上使用されることが見込まれ1月当たりの報酬について88,000円以上であって学校教育法に規定する生徒、学生等でない特定適用事業所で使用される者」は、収入要件を満たしても扶養となることはできません。

<参考>
被扶養者とは? | こんな時に健保 | 全国健康保険協会 (kyoukaikenpo.or.jp)
健康保険法 | e-Gov法令検索
国民健康保険法 | e-Gov法令検索
国民年金法 | e-Gov法令検索
厚生年金保険法 | e-Gov法令検索
障害年金|日本年金機構 (nenkin.go.jp)
障害等級表|日本年金機構 (nenkin.go.jp)
20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等|日本年金機構 (nenkin.go.jp)
特別障害給付金制度|日本年金機構 (nenkin.go.jp)