相続人には、単純承認、限定承認、相続放棄の3つの選択肢がありますが、いずれを選択するにしても被相続人の債務を把握するのは非常に重要です。マイナスの財産である債務は、相続開始と同時に法定相続分の割合で相続人に当然に割り当てられ、相続人全員で連帯して責任を負わなければなりません。たとえ、プラスの財産を受け取らなくても、相続放棄の手続きを取らない限りは債務に対する責任は残ります。では、債務を把握するにはどうしたらよいのでしょうか?
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債務を探す方法とは?

(1)被相続人宛の郵便物をチェックする。
 まずは、被相続人宛の郵便物をチェックします。明細書や請求書が含まれている場合には、送付元に連絡して、残っている債務(残債)の額を確認します。この際、残債の支払いをするかどうか確認されることがありますが、「支払います」と言ってはいけません。支払いの意思表示をすると、相続放棄をしたくてもできなくなる場合があります。

(2)クレジットカードをチェックする。
 クレジットカードの持ち主が亡くなった場合には、遅かれ早かれ解約の手続きが必要となります。手続きを怠ると、いつまでも年会費が引き落とされたり、カードでの支払いが継続されてしまいます。被相続人の財布等をチェックして、クレジットカードを確認し、カード会社に残債を確認するとともに、解約手続きについて相談しましょう。ポイント等を家族が引き継げるタイプであっても、安易に引き継ぐと相続放棄ができなくなる場合がありますので注意しましょう。

(3)銀行の取引履歴をチェックする。
 通帳やキャッシュカードから被相続人の口座がある銀行が把握できている場合には、その銀行に過去の取引履歴開示請求をすることにより、10年分の引き落とし(債務の支払い)状況が確認できます。この請求は通帳が手元に無くてもすることができますし、相続人一人だけでも行うことができます。口座のある銀行が分からない場合には、心当たりのある銀行に対して口座照会の手続きをします。

(4)日本信用情報機構(JICC)に情報開示を請求する。
 本人が登録されている自分の信用情報(ローンクレジットなどの契約内容や支払状況等に関する情報)を確認できる機関ですが、死亡した被相続人の法定相続人や配偶者または2親等以内の血族も利用することができます。本人からの開示請求はスマートフォンでも可能ですが、相続人からの請求は郵送のみとなります(窓口は当面の間休止)。開示請求に必要となる書類はこちらで確認することができます。開示手数料は1,000円となります。

(5)割賦販売法・貸金業法指定信用情報機関(CIC)に開示請求をする。
 消費者のクレジットおよび消費者ローンに関する信用情報(残債額など)をクレジット会社から収集し、他のクレジット会社に情報提供する会社ですが、本人や死亡した被相続人の法定相続人も利用することができます。本人からの開示請求はインターネットでも可能ですが、相続人からの請求は窓口または郵送での手続きとなります。開示請求に必要となる書類はこちらで確認することができます。開示手数料は1,000円となります。

(6)全国銀行個人信用情報センター(JBA)に開示請求をする。
 一般社団法人全国銀行協会が設置、運営している個人信用情報機関で、ローン等に関する個人信用情報を登録し、会員に対して情報を提供する機関ですが、本人や死亡した被相続人の法定相続人も利用することができます。本人からの開示請求はインターネットでも可能ですが、相続人からの請求は郵送のみとなります。開示請求に必要となる書類はこちらで確認することができます。開示手数料は1,124円~1,200円となります。

相続人のためにできること

 銀行やローン会社からの借入れは比較的容易かつ安価に見つけることができますが、個人間の借金を見つけるのは借用書の写しを残していない限り不可能に近いものがあります。また、被相続人が他人の債務の保証人となっている場合には、債務者が弁済できなくなると相続人が返済を迫られることになります。被相続人の死亡から3か月以内に残債を知ることができれば相続放棄を選択することも可能ですので、残される遺族のために債務等のリストを残すことをお勧めします。


<参考>
日本信用情報機構(JICC)指定信用情報機関
指定信用情報機関のCIC
一般社団法人 全国銀行協会